マイルスデイヴィスの68年の作品。
50年代中盤までのハードバップ、50年代後半から60年代中盤までのモードジャズで、
ジャズの帝王となったマイルスが、ロックへの接近を試みたとされる作品。
笑顔milesdavis

当時、エイトビートの導入、エレキギターの導入(1曲だけ、ジョージベンソン)が話題になったらしい。
ロックに接近?ってことで、楽しみにしながら購入。


 
購入してみたものの、あまりピンと来ず。
ずーと、どっぷりロックを聴いてきてワタシが、一部のジャズを好きになったのは、
マイルスを代表とするモード期のジャズ。
激しくスイングするリズム隊、スリリングでクールなホーンやピアノのフレージング
そのマイルスが、68年当時、新たにロックに接近した・・・か?
これを発表する前は、モードジャズ・新主流派ジャズのピークを極めた時期
「E.S.P. (1965)」
「Miles Smiles (1966)」
「Sorcerer (1967)」
「Nefertiti (1967)」と
ずらりと傑作が4作も続き(60年代4部作と呼ばれるらしい)、いずれもスリリングで美しく、
躍動感のあるモノだった。

それらに比べると、どうも本作は平べったい印象。
(まぁ、4部作が凄すぎるってことか。)

おそらく、長年ジャズをどっぷり聴いてきた人が、ロック系の大御所ミュージシャンが、ジャズに接近して話題になった作品(つまり、フュージョン)を聴いても、ピンと来ないことと同じかもしれんな。
例えば、ベックの「ブロー・バイ・ブロー」は、ジャズファンからすれば、「全然ジャスじゃない!歌のないロックだ。」と感じたろう。

最近、小川隆夫さんの本で、本作の評を読んだ。
8ビートの導入で、トランペット、サックスのフレージングが変わった。1フレーズが長くよりバリエーションが豊かになった云々と解説。
これを読んで、再度聴きなおしたら、結構良かった。
結局8ビートの導入って言っても、冒頭の1曲目だけ。これが12分を超える長い曲で、印象が強すぎた。
小川さんが言うことはわからんでもない気がする。
1曲目以外は、従来通り楽しめた。




小川さんの解説は、中山康樹氏の評論よりも、よりミュージシャン目線と感じる。
ソニースティットを評価している点も気に入っ た。
マイルス・デイヴィス―コンプリート・ディスク・ガイド
小川 隆夫
東京キララ社
ミュージシャン目線だと思ったら、
小川さんは、ジャズジャーナリストでかつ、
ギタリストでもあるらしい。
どうりで。(☟)


ただし、中山氏の本の方が笑えるし、時に感動もある。