ロベンフォードは21歳でジミーウィザースプーンのサポートギタリストとなる。ウィザースプーンとの共演時のロベンは ブルースを基本にしながらジャズフィーリングもあるスタイルを確立していて、現在でも、この時のプレーは高く評価されている。一方で、同時期の他のバンドやプロジェクトにおけるロベンのプレーはやや精彩を欠く感があり、ウィザースプーンとの共演には突出した輝きがある。何故か?その原因を考えながら、若きロベンフォードの音源をご紹介する。

18歳のプロギタリスト



ロベンは、兄のパトリック(ドラムス)とバンド活動をはじめ、18歳でブルースハーピスト兼ボーカリスト・チャーリーマッスルホワイトに雇われ、The Charles Ford Bandとしてレコーディングに。これが現在聴けるできるロベンの最古の音源と思われる。


チャーリーマッスルホワイトは、米国ブルース界では、それなりに有名で多くのCDが販売されている。本作は、71年のレコーディングとクレジットされていて、ジミーウィザースプーンのバックに参加する直前と思われる。基本的にマッスルホワイトのハープが中心で、音楽性は、ポールバターフィールドブルースバンドに近く、ハープもそれっぽい。しかしボーカルが弱いため、ちょっと2流な感じ。ロベンは、マイクブルームフィールドのファンなので、キャリアをスタートするには、プレーしやすいフォーマットだったと思われます。ただし、ロベンのギターを期待して購入するには、あまりに高つく買い物です。ブログ管理人は二束三文で購入したので、現在の価格には驚きました。(4,000円~5,000円)このCDは、マッスルホワイトの初期の作品2枚を一枚にしたようで、ロベンの参加は、前半の7曲。ロベンのリードギターは、それほど目立たないが、3曲でロベンらしいフレージングが聴けます。既にジャズ&ブルースのフィーリングがありますが、後年の風格には至らず。熱心なファンの記念碑的な購入と割り切って買う場合以外はおすすめできません。

なお、The Charles Ford Bandは、後に弟のマーク(ハープ)も参加して、パトリック、ロベン、マークのフォード三兄弟が中心となったThe Ford Blues Bandとなります。これまたポールバターフィールドブルルースバンド風。2001年にトリビュート盤を製作しています。
Tribute to Paul Butterfield
Robben Ford & Ford Blues Band

この作品も含めて、フォードブルースバンドの作品の多くは、ロベンフォードとの連名名義。ロベンの「Talk To Your Daughter」のヒット以降、ロベンが兄弟バンドを支援している構図。メンバーそれぞれ十分な技量なれど、オリジナリティーに欠け、どの作品聴いても同じ?に感じてしまいます。自称ロベン好きのブログ管理人でも3作品の購入に留めました。ロベンのプレー内容は、ブルーライン時代の雰囲気。ポールバターフィールドブルースバンドやロベンのファンなら楽しめますので、一聴の価値はあります。



BLUES COLLECTION by Robben Ford
Robben Ford

ロベンの初期からブルーラインまでのブルース作品の編集盤。初期のロベンの参加作品の打診買いにはちょうどイイです。一部、ブルーライン時代のライブも収録されています。ただし、ロベンのプレーに特筆すべき点はないと思います。



ジミーウィザースプーンとのライブと同時期のライブで、ジミーウィザースプーンは参加しておらず、ヴォーカル&ギターでロベンの独り舞台。ファンの評価はけっこう高い作品。ですが、ウィザースプーンとの共演時より、ギタープレーが冴えない。ドラム、ベース、キーボードなどほかのメンバーも同じなのに。リーダーとしてのステージよりも、ウィザースプーンのサイドの方が、実力発揮できるのか?


Jimmy Witherspoonとの共演


ロベンは、The Charles Ford Bandの後、ジミーウィザースプーンのサポートギタリストとなる。ウィザースプーンとの共演は、The Charles Ford Bandのレコーディングから1年~2年後、上記の「Discovering the Blues」とほぼ同時期のはずですが、そのプレーの印象は驚くほと違います。「覇気」が全く違うのです。複数のライブがYouTubeにもアップされていて、その多くはCD発売されていない音源のようです。これらを見て、「!」と感じる方には、下のCDをおすすめします。





ウィザースプーンとの共演におけるロベンのプレーは、いい意味で若さが溢れていて素晴らしい。ソロデビューの「ギターに愛を」よりもシンプルな音使いや譜割はシンプルに感じるが、勢いがって、鮮魚のごとくいきいきしている。これを聴くと、若いって凄いことだなぁと思う。 バッキングとオブリガードが一体化したプレーが素晴らしくボーカルに寄り添いながら、主張もする、「押しと引き」が絶妙。

ライヴ・アット・モンタレー・ジャズ・フェスティヴァル1972
サブタイトルは「ジミー・ウィザースプーン・フィーチャリング・ロベン・フォード」となっていて、この72年の時点で、ロベンは単なるバックバンドの一員扱いではない。ただし、再発売時にロベン人気にあやかって、タイトル変更された可能性もある。バンドサウンド全般の低音域(特にキーボード)が少し歪んでしまっていて、それがモッタイないが、演奏は素晴らしいライブ。ノリノリの1曲目に始まり、その後は、スローとハイテンポの曲をほぼ交互に演奏。まったり唸るウィザースプーンのヴォーカルに絡むロベンの千変万化・自由自在のギターを楽しめる。基本的に主役はロベンである。アップテンポの曲では、スイングしながらドライブする独特のギタープレー。昔、ロベンについて「スイングフレーズをオーバードライブサウンドで鳴らした最初のギタリスト」と評した記事を読んだことがあるが、この頃のプレーを形容した言葉かもしれない。最大の聴きどころは、スローブルースにおけるロベンのJAZZYなブルースギター。「Aint Nobody Business」「I want A little girl」のようなベタなスローブルースがベタにならないところがミソ。特に「I want A little girl」における静寂のささやきフレーズから激しい切り込みフレーズ(コンビディミニッシュ)を炸裂させるセンスは21歳の若者とは思えず、シビレます。一方で、ウィザースプーンってオッサンは、オオモノっぽいが、音程に不安があるし、妙なシャウトと野太い声の「味」だけで勝負するタイプで、ブログ管理人はやや苦手の部類。終盤、ウィザースプーンとロベンが交互に歌うブルースがあるが、ロベンのボーカルの方がいいぐらいに感じる。しかし、実は、このウィザースプーンこそが、ロベンの素晴らしい演奏を引き出した張本人か?と考えるに至った。同時期のロベンのソロライブよりも、こちらのプレーに覇気があるのは、ステージ上におけるウィザースプーンの盛り上げによって、ロベンのメンタルが高揚した結果ではないか?と思うんです。ブルースセッションやったりする人はわかると思いますが、初めてのメンツでセッションしても、自分以外のメンバーを高揚させる上手いバンドマスター(通常、ボーカル)って、いるでしょう?ソロのターンアラウンドで、名前を紹介したり、「ワンモア!」と、敢えて、もう一回りソロを促したりする人。ウィザースプーンは、1曲目のエンディングで「ローベンフォード!」と紹介、その後、何度も連呼して、盛り上げています。相当、気に入っていたんでしょう。ウィザースプーンの煽(おだ)てに乗ってロベンは水を得た魚になって跳ねまくる、そんなライブ。名盤です。

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ギターは、ギブソンスーパー400というフルアコースティック。このサイズのフルアコをドライブさせて弾き倒すギタリストは、この人だけだったろう。ES-335などのセミアコよりも更にエアー感のつよい音は、面白い音です。(好みは分かれる音かもしれない。)



Live
Jimmy Witherspoon
上記のモンタレーフェージャズフェス2年後の74年のライブ。ファンの評価は、こちらの方が上かも。品薄なだけに評価が上がっている感もあるので、高値掴みにはご注意を。内容・クォリティはモンタレーとほぼ同等、プレーはこちらの方が、リラックスしている感あります。演奏曲にスローが少なく、「カンザススティー」や「ウォーキンバイマイセルフ」などのロッキンブルース中心。


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以下、追加参考情報

その後、スティーブクロッパープロデュースのソロ名作「ギターを愛を」(Inside Story)
Inside Story
Ford, Robben
Wea International
1997-05-30

で第一線のメジャーギタリストになりますが、その過程では、「なんでもかんでも」プレーするセッションギタリストとして、稼いでいたようです。その中には、あのハードロックバンド・キッスの覆面ギタリストとしての仕事もありました。2曲だけレコーディング参加しています。立派なハードロックギターを披露していますが、それでもロベン風味は残っています。興味ある方はどうぞ。






Live at the Notodden Blues Festival
Jimmy Witherspoon&Robben Ford
92年の再開ライブ。経験を積んだ余裕シャクシャクの演奏。若さ故の輝きはないので、優先順位の高い音源ではないが、ブルーライン期のロベンが好きなら、それなりに楽しめます。




おしまい。