アンソロジー、リマスターデラックスなどの再発・蔵出し系の商売には、なるべく乗らないようにしている。それは本編を再度購入することへの抵抗感、またアウトテイクや未発表曲を繰り返して楽しむことは稀である、そんな理由から。

そんなケチな私も、これは買わず過ごすことが出来きなかった。
Wildflowersの収録曲のライブを集めた「Wildflowers Live」はどうしても聴いてみたかったから。

「Wildflowers&All the Rest」


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意を決して払った約5,000円のブツが届いた。
なるほど、そこそこ豪華なつくり。

4枚組
①正規のスタジオ作
②All the Rest、未発表曲。
CD2枚組の構想もあったが、結局1枚で発表されたため、収録されなかったもの。
③Home Recordings デモヴァージョン。
④Wildflowers Live本作収録の曲のライブ演奏を編集したもの
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内容は、すこぶる良く期待以上で満足。
歴史的な名作にアンソロジーが出来たことは、非常に喜ばしい。
長く楽しめそうだ。
聴いてみて、さらにブックレットのデータなどを見ていくと、
Wildflowersのレコーディング前後に起きたトムペティとハートブレーカーズに起きた出来事が、サウンド等に反映していて、非常に興味深い。


ブックレットには、プロデューサー・リックリュービンのコメントがあった。

「『Wildflowers 』は、私たちがレコーディングを終えてリリースした日と同じように、今も新鮮で新しく、時代を超越しているように響く。」(和訳By ワシ)と、自画自賛。
時代を超越した・・・とは、本当、その通りだと思う。

私は、トムペティの熱心なファンではない。トムペティを聴き始め時、
評判のいい「Wildflowers」と「破壊」を購入した。
いきなり、最高傑作候補2枚を聴いてしまい、その後、買い集めるも、「Wildflowers」に並ぶ作品は見当たらず、群を抜いた傑作だと思う。ロック史の残るレベルであり、全体感はボブディランの「ブロンド・オン・ブロンド」に似たところがあると感じる。

トムペティ自身も本作の出来映えには満足したと語っている。
リックリュービンは、その後もトムペティ&ザ・ハートブレーカーズをプロデュースするも、「Wildflowers」を超える作品にはならなかった。
そのことをリックリュービン自身がわかっていて、上記のコメントなのだと思う。

「Wildflowers」は、決してとっつきやすいキャッチーな売れ線アルバムではなく、どちらかと言えば地味な印象。CD1枚ではあるものの、収録曲は15曲、約70分、60年代ならLP2枚組の内容なので、全体イメージを把握するには、ちょっと時間がかかる。聴くたびに好さが増すアルバムで、当分は新たに好きになる曲が出てくる状態が続く。

2枚目のAll the Rest、未発表曲集

トムはCD2枚組ぐらいの曲を準備したが、結果的に15曲に絞り込まれ、収録を見送られた曲も含めて、今回蔵出しとなった。
(なお、この未発表曲の半分弱は、トム&ハートブレーカーズが映画のサウンドトラックを担当したアルバム「She's The One」に使用されています。今回の未発表曲集とは、別テイク)

She's The One
Tom Petty & The Heartbreakers
Warner Bros / Wea
1996-08-02



3枚目のHome Recordings

は、デモテイクと呼ぶには、高いクォリティー。アコースティックギター中心であるが、曲によってエレキギター、ドラムスは入り、十分聴く価値あり。正規バージョンと異なるアーシーな感じが良い「You Dont Know How it feel」、ホームレコーディング段階では、正規ヴァージョンと大きく異なる「Wake Up Time」「Crawling Back To You」などが興味深い。

4枚目 「Wildflowers Live」


トムが死去するすこし前に発表された「Live Antholoty」(*参考)はボリューム満点4枚組で十分楽しめる内容であったが、「Wildflowers」収録の曲はそれほど多くなかった。全体的に、スタジオよりもアドリブパートが増え演奏時間が長くなっているので、ファンには歓迎されると思う。ライブ演奏では、マイクキャンベルとトムペティのそれぞれのギターパートが把握しやすい。マイクの流石な達者ぶりとトムの意外なエッジの聴いたギタープレーが楽しめます。
特に2人のリードギターが活躍する「It's Good Be King」はライブ用に相当なリハーサルを重ねたアレンジで、終盤のマイクのギターソロはのギターヒーローのごとく弾きまくる。(ちなみに、マイクはトムの死後、フリードウッドマックに加入したとの情報あり。)

また「Wake Up Time」のライブは、スタジオテイクよりホームレコーディングに近い演奏、それはそれで楽しめる。
(*参考)
Live Anthology
Tom Petty & The Heartbreakers
カバー曲(フリードウッドマック、ベンチャーズ!など)の演奏も流石の出来。これも4枚組で相当楽しめました。





さて、販売パターンが複数あるので、ご注意を。

Wildflowers & All The Rest
これは、2枚組で正規のスタジオ本編と未発表曲集の上記②(2枚目)


Wildflowers & All The Rest (Deluxe Edition)
こちらは、4枚組で、①~④のセット


ややこしいのは、上記2つとは別に、「Wildflowers」のアウトテイク集が販売されており、
それが下記。

FINDING WILDFLOWERS (ALTERNATE VERSIONS)
TOM PETTY
これは、単なるボツテイク集以上の価値があります。
その理由は半数のテイクのドラムをStan Lynch(スタンリンチ)が叩いています。あのスネアをひっぱたくようなハードドライヴィングドラムが聴けます。
Wildflowersがトムぺティのソロ名義になった理由は、スタンリンチの後任であるスティーブフェローヌがハートブレーカーズの未だ正式メンバーでなかったため、と言う説があります。この未発表テイクは、スタンリンチのいたハートブレーカーズの演奏でWildflowersの曲が6曲。その仕上がりは上々で、スティーブとスタンの違いが楽しめます。特に明らかにアレンジの違う曲があり、「Wake Up Time」はテンポアップしてオッカバラード調、「Crawling Back To You」もロック調になり、それぞれ、それはそれで味があります。また、アウトテイクではないが、ハートブレーカーズのライブ専用曲「Drivin Down To Gerogia」(ライブアンソロジー、Wildflowers LIVEの両方に別テイクライブが収録されている)のスタジオヴァージョンも収録、これもいい。
この他の曲も間奏のアレンジが全く異なる曲も複数あり。
ちなみに、タイトルソング「Wildflowers」はリンゴスターがプレーしたヴァージョンを収録。


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と、いうことで、トムぺティファンには、

Wildflowers & All The Rest (Deluxe Edition) とFINDING WILDFLOWERS (ALTERNATE VERSIONS)
を併せて購入されることをおすすめします。

また、Wildflowers未聴の方には、通常盤を聴いてみることをおすすめします。


おしまい。